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書紀(2) [序叙]

 太平洋戦争に勝利したアメリカ軍は、日本を占領統治するに当たって、日本神話に結びつく原典、論文の類を皇国史観の元凶として出版を差し止め、また革新を自認する出版社はあえて手を出そうとしなかった。このため『日本書紀』という書物は、教科書にその名前と記事の概要が紹介されるだけの、まるで鵺のような存在になってしまった。 こうした状況のなかで、1962年(昭和四十二)3月、岩波書店から普及版である岩波古典文学大系『日本書紀』が刊行された。上下巻合わせて1300ページを超えるのは、原文と読み下しを併記しているだけでなく、随所に脚注を施し、〔補注〕で諸種の考察を展開しているためである。

 社会人になるかならぬかのころ、どういう弾みであったか定かではないけれども、これを購入してあった。上下巻合わせて4000円というのは、大卒の初任給が8万円前後だった当時、決して安くはなかった。それが書架でほこりを被っていた。
 ちなみにインターネットの中古本販売サイトで調べたところ、上巻が6000円、下巻が5800円だという。30余年で3倍というのが妥当かどうかは分からないが、いまだに需要があるということであろう。
 書棚から引き出したのは数年前である。
 あることを思いついた。
 それというのは、「日本」という文言が何回、どの巻に、どのように使われているか、ということだった。ごく素朴に、この国はいつから「日本」なのか、その読みは「ニッポン」が正しいのか「ニホン」か、と思ったのがきっかけだった。
 「日本」の文字を冠した最も古い歴史の書であれば、どこかにその由来が示されているに違いない。そのような目的のために全巻を眺めるというのは、読むという行為から大きく外れる。
 興味のありようにもよるであろうが、せっかくの機会なので紹介すると、その巻第一「神代上」の書出し第一段は以下のようである。

 古、天地未剖、陰陽不分、渾沌如鶏子、溟涬而含牙。及其清陽者、薄靡而爲天、重濁者、淹滞而爲地。精妙之合摶易、重濁之凝竭難。故、天先成而地後定。然後、神聖生其中焉。故曰、開闢之初、洲壤浮漂。譬猶、游魚之浮水上也。于時、天地之中生一物。状如葦牙。便化爲神。
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