SSブログ

情報と知識(5) [序叙]

電子技術の扉を開いたのは真空管である。真空管は戦争によって発展し、その発展が無視界通信の技術を進展させた。真空管がラジオとテレビを生み出し、その電波をめぐる様々な研究がレーダーを生んだ。新しい技術がただちに別の新しい技術を生むスパイラルの構図がここに誕生した。このことはのちに詳述する。 インドネシア・ジャワ島のスラバヤ海軍工廠で、砲撃戦で傷ついた艦船の補修を指揮していた松尾三郎という海軍技術大尉は、「主砲を外してもいいから、電探を付けてほしい」という、水兵たちの悲痛な訴えを聞いた。
 「電探」すなわちレーダーのことである。
 日本海軍の砲術は世界一だった。
 波高、風向、砲弾を発射する際の衝撃を、水兵たちは厳しい訓練の中で読み取ることができた。砲弾を発射する寸前わずかに機関を動かし、艦船の傾斜を直すのである。
 日本海海戦でロシア艦隊を打ち負かしたのは、この職人芸的な調整能力によっていた。ところがアメリカの艦隊は、水平線の向こうや島の陰から砲弾を発射してきた。
 それがほぼ正確な位置に落下するために、日本の海軍は損傷を重ねざるを得なかった。
 アメリカ海軍はレーダーを装備していたのだ。
 これをきっかけに、松尾は日本に帰還してレーダーの開発に没頭し、ようやく一応の完成を見たとき、日本政府が発したポツダム宣言無条件受諾の電波を自分が開発した装置で傍受することになる。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

情報と知識(4)情報と知識(6) ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。