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情報と知識(6) [序叙]

 零戦の名パイロットとして鳴らした塚本祐造中尉は、1943年(昭和十八)に入ってアメリカ軍が新兵器を実装したらしいことに気がついていた。隣を飛んでいる友軍機が、被弾してもいないのに突然火を噴いて落下していく光景を幾度か見た。砲弾に真空管が仕組まれていたことを、塚本は戦後になって知った。 それに先立つ1940年(昭和十五)、日本測定器で常務の職にあった井深大は、レーダーの電波が照射物の分子に摩擦現象を起こすことを見つけていた。のちに東京通信工業で二人三脚を組むことになる盛田昭夫と知り合ったのは、軍需動員で熱線爆弾の開発に従事している中でだった。ほぼ同時に同じ現象をアメリカの技術者たちも発見していて、海を挟んだ開発競争となった。真空管の性能が勝負を決定した。
 現在は地球の裏側で起こっていることが、衛星を通じて茶の間のテレビに映し出される。1963年、日米間で初めて衛星テレビ中継が放送されたとき、最初に流れたのは米大統領ケネディが暗殺されたというニュースだった。その衝撃はあまりにも大きかった。
 アポロ11号が月面に設置したテレビカメラから送られた映像は、「地球」の概念を一変した。地球が海で覆われた水の惑星であることを知ったとき、戦争と平和に関する認識が変わった。
 テレビカメラが小型化し、中継技術が進歩した結果、どれほどの緊急度か疑わしい出来事まで臨時ニュースで流される。事故現場からの中継が簡単にできるようになった分だけ、緊迫感がない。まして北海道で起こったトンネル崩落事故のとき、被害者家族に向けられたテレビ局の心無いカメラとマイクは、マスコミへの不信感を募らせた。
 文字から得る知識や情報と比べ、映像のインパクトは大きい。翻訳や解釈をする間もなく、映像は強引に脳を刺激する。脳が強い刺激に反応するのは当然であって、その連鎖は相乗的に社会の動きを加速する。
 さらに現在はインターネットが普及し、携帯電話という利器が発明され、ちょっと余った時間を喫茶店でつぶしている間にも電子メールというものが届く。 テレビ画面にテロップで流れる臨時ニュースと同じで、外出している先まで追いかけるほどの重大事というものは、そうそう起こるわけではない。個々の人間の判断能力が低下し、責任回避能力だけが増殖しているのではないか。

【補注】


月面からの映像 アポロ11号の月面着陸については、アメリカ合衆国政府の陰謀説がある。月面からの映像は、実はアリゾナの沙漠で撮影したものであるという。「宇宙飛行士が月面に降り立ったとき、なぜ砂塵が舞ったのか」「月面に立てた旗がはためいているのはなぜか」――それは地球と同じく空気がある証拠である。そう言われれば、納得できない話ではない。

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